駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
*
「今日は気分が良いので散歩しませんか」
沖田に声をかけられ、まだ仕事があるのに半ば無理矢理連れ出された矢央は沖田行き着けの甘味処にいたりする。
気分が良いと言うだけあって、団子を頬張る沖田の顔色は確かに良い。
「本当に此処の団子は絶品だ」
「沖田さんは甘いもの好きですよね。 お店もいっぱい知ってるし」
この時代に来て行った甘味処の殆どは沖田の行き着けだったりする。
美味しそうに食べる沖田につられ、矢央も三本目の団子を頬張った。
「最初京に来た頃は仕事もあまりなくて、楽しみと言ったら美味しい甘味処捜しくらいでしたからね」
「そうなんですか。 沖田さんといれば美味しい甘味がいっぱい堪能できそうですね」
「勿論です! 矢央さんにはご馳走しますからね」
「ありがとうございます」
最後の一本を食べ終わりお茶を飲んでいた沖田は、じっと矢央を見て何度も口を開いたり閉じたりを暫く繰り返した。
何か言いたいことがあるんだろうな、と思ってにこっと微笑みかければ、顔を赤くして視線を反らしてしまう。
なんなんだろうか。
「沖田さん、私の顔に何かついてますか?」
「え?いや、そうではなくて…」
じゃあなんだ。
穴が空くほど見つめられると対応に困る。
「あのぉ、一つお願いがあるんですが、聞いてもらえますか?」
「なんでしょう?」
机に突っ伏した状態で上目遣いで矢央を伺い見る沖田。
女より女らしいその綺麗な顔に、思わず可愛いと思ったのは秘密だ。
「私達、なんだかんだ言って、もう四年共にいますよね?」
なんだか最近やけに時を意識する機会が多いのは気のせいか。
「そうですね。 早いですね」
つい一昨日同じ台詞を言ったな。なんて微笑んでお茶を飲む。
「総司って呼んでくれませんか?」