駆け抜けた少女ー二幕ー【完】


矢央は首を傾げながら歩き始めた沖田の隣を歩く。


「いるじゃないですかー。 土方さんに永倉さんに山崎さんに…」

「それはただ口煩いだけですよ」


指折り数えていた沖田は、おやおやと喉を鳴らした。

矢央が可愛くて仕方ないから、少し大袈裟すぎるくらい世話をやいてしまう彼等なのに、矢央にしてみれば口煩いの一言に纏められてしまうのか。



ならば自分もその口煩い一人に入っているのだろうか。



「でも、感謝してますよ。 口煩いくても、嫌いじゃないです」


ふわっと花が咲いたように微笑む矢央を横目に見下ろし、沖田は満足げに微笑む。


「なら良かった」



暫く歩くと屯所が見えてきた。

楽しい時間はあっという間だなと思うと、少し歩く速度が落ちてしまう。


隣を歩いていた沖田が少し後ろにいることに気付いた矢央は、まさか体調が悪くなったのではと心配になる。



「総司さん大丈夫ですか?」


俯き歩いていたとこへ、矢央の不安げな顔が覗き込んでくる。


「え?」


大丈夫とは何に対してだろうと疑問符を浮かべていると、小さな手を一生懸命伸ばして沖田の額に触れようとしていた。


その様子が余りにも可愛くて、沖田は背を屈めてあげることにした。


「熱はないですよー」

「あ、ほんとですね。 でも、いきなり静かになるから心配するじゃないですか?」

「あはは。私だって浸りたい時もありますよ」


安心したのか離れて行く温もりに寂しさを感じ眉を下げる。






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