駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「久しぶりぜよ。 矢央」
その男の名は坂本龍馬。
にかっと八重歯を見せて笑う坂本を、眼を見開いて見詰めた。
「坂本さんっ!!」
もうきっと会うことはないと思っていた坂本と再び会えた喜びに、矢央は永倉の存在も忘れ坂本の腕に飛び込んでいく。
再会出来たことを喜ぶのは坂本とて同じで、胸に飛び込んで来た矢央を抱き締め、よしよしと頭を撫でた。
「元気にしちょったか? と、その様子を見れば元気そうぜよ」
「はいっ! 坂本さんは? 相変わらず逃げてます?」
「相変わらずとは酷いき。 んまあ、逃げてばかりではなかったけども…」
「ん? …うひゃっ!?」
坂本がすーっと眼を細目、矢央から視線を上げた時、矢央の襟をぐいっと引っ張ったのは永倉だ。
噎せながら「あ…」と、今更やばい状況下にあることを悟った。
「坂本龍馬ねえ。 よくもまあ、副長や俺、新撰組がいる前で矢央に会いにこれんな?」
矢央を自身の背に隠すと、永倉は挑発的に微笑む。