駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
刀に手をかけようとする永倉を止めようとした矢央だったが、それより先に坂本が予想外な行動に出た。
永倉に対して頭を下げている。
これに驚いた永倉は「どういうつもりだ?」と、片眉を上げた。
「頼む。 矢央と二人で話をさせてほしい」
自分が追われている身だと知りながら、矢央に会いに来た坂本も此処で引くわけにはいかぬと覚悟を決めてきた。
どうしても伝えたいことがある。
もしこれが最後になるかもしれなくても、今一度言葉を交わすべきだと思って矢央を訪ねたのだから。
「それで私に話って…」
意外にも永倉は坂本の頼みを受け入れ、矢央達から少し離れた場所で此方を注意深く伺っていた。
何かあればいつでも駆け付け、刀を抜ける準備はできているようで、ちらりと一瞥した坂本は苦笑いを浮かべている。
「矢央は大事にされているようぜよ」
「え? あ、はい。 皆さん良くしてくれてます」
「そうか」
それに関しては安心。
しかし、それでは駄目だ。と、坂本は気を引き締める。
「矢央、俺と共に来い」
迷いなく放つ坂本の言葉。
「もう無理ぜよ。 このまま新撰組におれば、必ずおまんは死ぬ」
「………」
言葉を失った。
死ぬ。 そう宣言する根拠が坂本にはある。
一つ息を吐いた坂本は困惑する矢央に話始めた。