駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
道場につくと、中からは威勢の良い掛け声がして少しだけ顔を覗かせると、矢央に気づいた原田が手を振ってきた。
「原田さん、巡察じゃなかったんですね?」
「ああ、俺は夜番だからな。 それより矢央が此処に来るって珍しいじゃねえか?」
「あ、私はその…」
言葉を濁し、永倉の姿を探すと直ぐに竹刀を持って指導しているのを見つけると、永倉も矢央に気づいたらしく手招きしている。
「原田さん、私ちょっと行ってきますね」
原田を残し永倉の下へ来ると
「お疲れさまです。 あの、永倉さんが私を探してたって…」
「ああ矢央、防具着けて竹刀を持ってこい」
「…え?」
防具と竹刀。 今まで縁のなかった物を持ってこいと指示されて首を傾げた。
「なにぼさっとしてんだ。 お前これから刀持つって決めたんだろ? 訓練してやるって言ってんだ」
どうやら永倉の用は、矢央に剣術指南することだったらしく少し呆れ顔で矢央を見下ろしていた。
刀を持つ事を決めたのに、確かに矢央は剣術に関しては素人も同然。
そんな状態で、しかも女の矢央に刀を握らせるわけにはいかないと永倉は判断した。
「おら、俺も暇じゃねえんだぞ! さっさと準備しろ!」
「は、はい!」
こうして矢央の剣術修行が始まるわけである。