駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「こりゃあ、みっちり絞られたな」
原田の笑い声に更に眉間に皺が寄った。
稽古を終えた矢央は、沖田の部屋の前の廊下に突っ伏している状態で痛む身体が悲鳴を上げている。
永倉の稽古は厳しく、矢央の弱点ばかりを攻めてくるので途中から泣いてやろうかと思った程だ。
「いつ出動になるかわかんねぇんだ、一から丁寧に教えてたんじゃあ年食う前に死んじまうだろ」
「…でも、最初から飛ばしすぎっ…てててっ」
「動くな。 にしても、俺はお前の手当てばっかしとる気がするんは気のせいやろか」
遠慮なく打ち込まれ、痣になった場所に湿布を貼っていく山崎は最後の湿布を貼り終えてバシッと叩く。
「痛いっ」
涙目で睨み付けられても平然と出されたお茶に手を伸ばす。
「そんなこと言わないで、素直に“心配”だと言えばいいじゃないですかー?」
「…ならば、沖田さんも俺に余り心配をかけるような行動は慎んでいただけると有り難いのですが?」
「あはは! 矢央さん、余り心配かけちゃ駄目ですよー?」
あ、逃げたな。
矢央は溜め息をついて、ギシギシと唸る身体を起こし柱にもたれた。