駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
さっきまで竹刀を持っていた掌は、未だにぷるぷると震えている。
永倉は手加減していた。
女子に対して当たり前なのだろうが、此方は汗を流し必死に永倉に打ち込もうとしていたのに、当の永倉は汗一つ流していなかった。
悔しい。
勝てるはずはない。
長年剣に携わってきた彼等に、少し武術をかじっているだけの矢央が勝てる見込みなんてない。
けれど、それではこれから新選組にいるためには駄目なのだと痛感している。
「永倉さん」
「あ?」
振り返ると、掌をじっと見つめたまま眉間に皺を寄せた矢央がいた。
永倉だけじゃなく、そこにいる人が皆、矢央を静かに見詰める。
「これから毎日稽古つけてくれますか?」