駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
矢央の祖父は矢央の家族の中で一番厳しい人で、武術を習わせたのも祖父だし、矢央が小さ頃から目標を立てさせ、それに向かうため厳しく見守っていた。
「もうね、悪さをしたら泣いて謝っても許してくれなかっんですよ! まさに鬼でしたね」
「鬼繋がりですか! でも、今此処に土方さんが不在で良かったですね。 じゃないと、反応が見たくては、ついうっかり“おじぃちゃん”と呼んでしまいそうですもん!」
「それ、私が被害被るじゃないですかっ!」
「あははは! 矢央さん怒ったら可愛い顔が台無しだ。 あ、鬼になっちゃいますよ? 鬼に!」
「確実に面白がってますね? もう…でも、他にも似てるんですけどね」
こうなった沖田に口では勝てないと判断し、無駄な体力消費を控える。
沖田が先を促したが、意地悪された仕返しに舌を出して教えなかった。
祖父と土方がもう一つ似ているところ、それは矢央だけの心にしまっておこうと思った。
怒った後、凄く甘やかしてくれるとこも似ている。
なんて沖田に言えば、矢央ではなく土方がからかわれてしまうだろう。
九月から井上なども含めて隊士を募るため江戸へ行った土方が、疲れを溜め込んで京へ戻ってきた時真っ先に沖田の餌食になるのは流石に可哀想だ。