駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
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近藤の部屋では、古株の幹部と矢央が集まり、皆神妙な顔保ちで向き合っていた。
「さっき話た通り、伊東の野郎は近藤さんの暗殺計画を企てた。 これを機会に御陵衛士を潰す」
十一月十日、御陵衛士に間者として潜り込んでいた斉藤が帰隊、持ち帰った情報が近藤の暗殺計画だった。
そのため幹部達を集め会議が開かれ、伊東の暗殺が決定されてのは、つい先刻のこと。
そして今は、気の許せる仲間だけを近藤の部屋に呼んである。
「永倉と原田に御陵衛士の方を任せるが…」
土方は近藤に顔を向けると、近藤は力強く頷き。
「平助のこと、上手く逃がしてやってくれ。他の者の眼がある以上、公には指示出来ない。 だから永倉君達が頼りだ。 平助を…」
「良かった。 近藤さんが、平助を逃がせって言ってくれなかったら、俺達は隊務に背くことになっちまう」
眉をハの字にした永倉を、近藤は一瞬目を見開き見た後、すぐさま同じ様に眉をハの字に歪めた。
御陵衛士に行ってしまった嘗ての仲間、否、心は今でも仲間である藤堂を近藤達は死なせたくなかった。
なので伊東暗殺後、その亡骸で御陵衛士をおびき寄せそこを一気に叩く計画だが、その時に藤堂だけは逃がそうと言ったのだ。
それを聞いた矢央は、また沢山の死人が出ることに不安を募らせるが、それでも藤堂は救えるのだと思うと少しだけ安堵した。