駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
そして三人に囲まれた時、もう駄目だと肩の力を抜いた。
助けに来たつもりが、永倉達に合うことすらできないなんて。
ぐっと奥歯を噛み締め、潤む瞳を誤魔化した。
死にたくない。
助けたい人がいる。
会いたい人がいる。
「へへ、坊主、ちょこまかと動きまわりやがって! もう逃げらんねえぞ!!」
「…っっ」
悔しい悔しい悔しい!!
本当なら、この作戦は成功していたはずなのに、熊木が関わっているせいでおかしくなっている。
そしてその熊木の狙いは矢央なのに、矢央の守りたいものに手を出しているのだ。
直接本人が出てきて、自分と戦えばいい。
それで死ぬなら、嫌だが今のこの状況で死ぬよりましだった。
そう思うのに、もう刀を掴む力しかない。
此処までずっと走り通しで、息も乱れっぱなしな上、戦い通しだ。
緊張感も半端なかった。
「死ねえええええっ!!」
「っっ!!」
一斉に三人から襲い掛かられる恐怖に、矢央は咄嗟に跪き頭を抱えた。
もう助からないと思って、こらえていた涙が頬を伝った。
が、一向に痛みには襲われなかった。
「お一、矢央なんでお前ぇ此処にいるんだっよっと!!」
原田は振り下ろされた白刃を長い槍で防ぐと、力任せに振り回した。
力に負けた男は、そのまま槍に突かれ絶命する。
「なに諦めてんだ馬鹿っ!! んな柔な稽古つけた覚えねえぞ!!」
うずくまっている矢央の隣に、背後から胸を突かれた男がドサリと倒れ込み絶命している。
ゆらりと顔を持ち上げれば、ひくひくと口角を動かし明らかに怒った様子の永倉に見下ろされていた。
そして、矢央の前にいた男は口から大量の吐血をし真横に倒れ込んだ。
「こんなとこに女子が来るもんじゃないでしょーが!」
聞き覚えのある声に、其方に顔を向けると、月明かりに照らされた懐かしい笑顔があった。
その途端、ぶわっと涙が溢れだした。
「へ、平助さぁぁんっ」
わんわん泣き喚く矢央の前に跪き、藤堂は優しく頭を撫でた。
「もう大丈夫だから。 約束しただろ?」
「っや、約束?」
「うん、君を絶対守るって」