駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
ドンっと畳を殴った。
闇の先を見詰めると、月明かりが雲の隙間か一筋の道をつくっていて神秘的なその光景を暫し見詰め、はっと息を呑む。
確かにいつも手遅れになっていた。
守りたいものを守れなかった。
でもそれは本当に正しいのか?
もし先に何か知っていたら、自分に結果を変える力はあったのだろうか?
仲間達が出来なかったことが、果たして自分にできたのたろうか?
そして、仲間を信じられなかったのは、本当に仲間のせいなのか?
それは自分が仲間を……
「…僕が、皆を信じるのが怖かったんだ」
信じて裏切られたら、本当にもう立ち直れないと思ったから、だから自ら心を閉ざした。
そしてその結果が自らを一人にし、今も尚こうして路頭に迷う結果となった。
先程までキラキラと美しかった光の筋が次第に薄れていった。
月に雲がかかったのだろう。
藤堂は眼を見開いた。
今漸く分かった。
このまま此処にいては、また同じことの繰り返しになると。
どうして篠原に聞いたあの時に迷ったのだ、あの時迷わず屯所に走っていれば少しは間に合ったかもしれない。
信じてもらえないかもしれない?
そんなことはどうだっていい。
信じてほしいのなら、自ら飛び込まなくはならなかったのだと。
あの時、仲間の危険を回避できたのは間違いなく藤堂だけだったんだと漸く分かった。
もう遅いかもしれない。
きっともう戦は始まっているだろう。
「それでも約束しただろっ!」
藤堂は御陵衛士が出て行く前に口々に言っていた場所、油小路へと走った。