駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

そして藤堂が油小路に着いた頃には辺りは戦場とかし、その光景に悔やみながらも迷わず刀を抜いた。


きっといるはずだ。

永倉、原田、そして矢央。


御陵衛士が新選組を罠にかけたというなら、永倉達がこの場に藤堂が来ると踏んでいるはずで、藤堂が来るならば永倉達がこの場に来ることも予想できる。


今からでも遅くない。

裏切ったままでは死ねない。



「新八さんっ、左之さんっ、矢央ちゃんっ!」


何処だ? 何処にいる?


藤堂に向かって新選組が男達が敵味方関係なく襲い掛かるが、難なくそれを交わしていると、漸く見つけた。


男三人に囲まれ、明らかに疲れ果てている彼女の姿を。


矢央ちゃんっ! 間に合ってくれっ!


無我夢中で走り、矢央の前方から刀を振り下ろそうとしていた男の身体を裂いた。


それとほぼ同時だっただろう、矢央の背後と隣でも男達が倒れたのは。


永倉と原田だ。

やはり捜していた三人がいて、藤堂は嬉しくて微笑む。

もう会えないと思っていた仲間と会えた。

間に合ったことに安堵していれば、目の前で矢央が顔をぐちゃぐちゃにして泣いていて驚いたが、跪くとその頭をなででやる。



「もう大丈夫。 約束しただろ?」

「っや、約束?」


矢央は首を傾げる、愛らしい姿に笑みが溢れて止まらない。



そう約束したんだ。





「うん、君を絶対守るって」





必ず守ってみせるよ、今度こそ絶対に。





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