駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
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離れで寝ていた沖田は、土方達がいる方がやけに騒々しくなったことに眉を寄せた。
矢央がお茶をいれに行ってから随分と帰りが遅いのも気になり、布団から出ると刀置きから刀を取って廊下へと立ち瞼を綴じた。
数人?否、数十人か?
人の気配が此方にも近付いてくるのが分かると、そっと刀に手をかける。
「沖田さんっ!」
沖田の背後に矢央と別れてから屯所に戻ってきた山崎が走ってやってくるのと、敵が二人の前にやってくるのはほぼ同時だったろう。
沖田はスーッと眼を細めて、四人の男に向き直る。
「山崎さん、これはどういう事ですか?」
「どうやら熊木の策略にまんまと嵌まったようです」
「…へえ、熊木さんですか」
「沖田さん此処は俺が。 貴方は部屋で」
休んでいろと言うより早く沖田は鞘から刀を抜き、へらへらと笑う男達に向かって歩いて行ってしまった。
もう一度名前を呼ぶ頃には、
「ぐはっ!!」
そこにいた男達を次々と倒した沖田を見て、山崎は額に手をあてがい溜息を吐いた。
沖田がいれば此方が有利にはなるが、それは健康体の沖田ならの話で、病気の沖田ではどれほど耐えられるのか分からない。
こんなところで死なすわけにはいかないと、山崎は離れを出て行こうとする沖田を制した。
「あかん!! 貴方は此処におってください!」
「…山崎さん、私なら大丈夫だと言ったでしょう? あちらには近藤さんや土方さんがいる。 一番隊の隊長がこんなところで寝ているわけにはいかない」
近藤になにかあれば、沖田は自分を攻めるだろう。
身体に鞭打ってでも、近藤の傍にいたい。
「ところで、矢央さんもあちらに?」
いくら止めようと無駄に終わりそうだと瞬時に判断した山崎は、それでも無理をしないことを条件に戦うことを承諾した。