駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
人で群がる通り、背の高い原田の前に可愛らしい女子がいるのを見て、矢央もある程度察しがついて。
「ありゃりゃ〜、原田さん鼻の下伸ばしてる〜」
「平助さん情報なんですが、あの方は原田さんのコレらしいですよ」
コレと言って小指を立てる沖田。
成る程と頷き、確かに面白いことになりそうだと悪戯っ子二人は顔を見合せ含み笑い。
「商屋の娘さんで、以前浪士に絡まれていたところを原田さんと平助さんが助けたそうなんです。 その後、彼女が何度か原田さんに声をかけていたそうですよ」
「ほほお。 つまり、原田さんはアタックされたわけですな」
「アタック?」
「まあまあ。 んで、本当にあの二人付き合ってるんですか?」
見れば茶店で楽しげに話している二人。
女子の方は頬を赤らめ、確実に原田に好意を抱いているように見える。
しかし誰も、原田から直接彼女の話を聞いた者はいない。
「平助さんは、原田さんもまんざらではないだろうと言ってましたけど?」
「でもこの前、永倉さんと島原行ってましたけど」
島原の存在がどんなものか、今ではよく知る矢央。
大人になったなと、少女の成長にニコニコと笑う沖田。
「永倉さんの女性の話はたっくさん聞きますが、原田さんは意外とないんですよ」
「……たくさん」
「ん? どうかしました?」
一瞬だったが、何故かムカついた。
しかし直ぐにその違和感はなくなり、また沖田と会話に盛り上がる。
「う〜ん。 此処からだと、会話が聞こえないから、何とも言えませんね」
この沖田の言葉が発端となり、彼らの悪ふざけはエスカレートする。