駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「くそっくそっ」と、敵に囲まれた状態の伊東はゆっくりと後退していく。
が、その伊東を振り返り様に
ーーーザシュッ!!
「がっ…はっっ貴様っっ!!」
簡単に斬り捨て熊木を血走った眼で睨み付けた伊東は、そのまま血を吐き出し後ろに倒れる。
「…これもまた運命ですよ。 貴方は今日死ぬべき人間です」
そう告げても、もう本人からの返答は返ってこない。
白刃についた伊東の血を凪払い鞘にしまい、この遺体を油小路へと運んだ方が貴方方のためになりますよ?と忠告した。
そう言われ確かに伊東暗殺を企て、油小路に御陵衛士達の死体があるならば伊東の死体が新選組にあるのは可笑しい。
熊木の指示に従うのは癪だが、土方は直ぐに手の空いている隊士に伊東の亡骸を今一度油小路れと持って行くように言った。
これによって多少違いはあるものの、歴史的には油小路の事件は変わらず後の世に語られることだろう。
「熊木、お前ぇは一体何がしてぇんだよ」
新選組に敵を送り込んでおきながら、その敵を自ら殺すなんて異常だろう。
「歴史を変えて自分に得があるように操っているんです。 というのが、当初の目的でした」
「やっぱり未来が見えてんだな?」
「もう隠す必要もないので、そうですよ。俺は断片的な未来を見ています。 いつからお気付きで?」
土方の言い方は、既に熊木が未来を見えていると知っていた口振りだった。
尋ねはしたが、何となく検討はついている。