駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「坂本龍馬ですか。 彼は間島さんを可愛がっていましたからね」


坂本龍馬の名前に矢央はピクリと反応し青ざめた顔で熊木を見詰めた。


「…もしかして」


声を震わせながら、山崎の支えを無くした身体で土方の隣まで歩く。

矢央を見てニヤリと微笑む熊木を見て、ゴクリと唾を飲み込んだ。



















「坂本龍馬は、俺が殺しました」


それは数日前に遡り、十一月十五日のこと。

近江屋にて休息を取っていた坂本龍馬を訪ねた熊木は、中岡慎太郎と共に坂本龍馬を暗殺した。

後に坂本龍馬暗殺事件は新選組の仕業とされ、後日近藤はそのことを問われることになる。


坂本が熊木に殺された。

それを聞いた矢央の瞳から、また涙が溢れ出す。


「…っく!なんでっなんで坂本さんをっ殺したのっ!?」

「邪魔だったので。 桂さんによからぬ助言をしたりするから、俺は長州にいずらくなるし、それに貴女に深く関わりすぎました。 だから、坂本龍馬を殺し、新選組が怪しまれる小細工までしてきましたよ」


全て貴女に関わったためだと言われた矢央はガクリと膝を折った。

土に爪を立てるとジャリッと嫌な音と痛みに顔を歪め、土の色が黒く滲んでいった。


「…坂本さん、も…新選組も…みんなあんたにっ何もしてないのにっ…私が何かしたなら、私を殺せばいいじゃないっ!!」


手に握られた土を熊木に向かって投げつけるも、距離があるためそれは届かず、そんな矢央を見ていられず沖田が傍に寄り添い背中をさすった。


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