駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
少年があれは予知夢だと確信する出来事が起きたのは、妹が言葉を話せるようになった頃のこと。
妹が少年に触れ言ったのだ「兄上、足怪我したの?」と。
しかし怪我などしていない少年は泣きそうな妹の頭を撫でて「してないから泣かないで」と言った後日、少年は仕事中に足を怪我をした。
その時、妹も未来が見えているのだと分かった。
足の痛みよりも、そちらが気になり少年は直ぐに妹の下へ戻るとあれやこれやと妹と話し、どうやら妹は触れた物(者)の未来が見えると分かった。
それから少年は妹の力と自分の力を合わせれば、未来は自分達の手の内で転がせるのではと思うようになり、今まで以上に学を学び稽古も励むようになる。
いつかこの力を使って世に出るのだと。
仕事に行かなくなり部屋に籠もって本を読み漁るか稽古ばかりしている少年は、ある日父に怒られるのだが、
「父上、俺達兄妹は凡人では与えられない力を授かったのです。 いつかきっとこの力を使い俺達を馬鹿にした奴等を懲らしめ、そして父上達に地位を与えましょう」
それからも少年は父母には耳に余る幾つもの言葉を発し、父母は次第に自分の息子を恐れるようになっていく。
母方には昔から不思議な力を持って生まれる者がいたらしいが、母は至って普通の人間なのに、どうやらその力を子供達が受け継いだらしく、母はそのことに苦しんだという。
少年とは違い妹、少女の方は優しく笑顔の可愛い娘へと育っていた。
だからこそ余計に母は心配した。
少年が清らかな少女の未来を壊しはしないかと。