駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
第五話*真冬の変化
早くも京は雪に埋まる。
十二月。 今年も後一月で終わるかと、白い息を空に舞い上がらせながら思う。
「間島、そんなとこにいれば風邪を拗らせる」
「斉藤さぁぁんっ」
ドテラを羽織っているものの、雪が積もるほどに外は寒いというのに、わざわざ縁側に足を投げ出していた矢央に斉藤は注意した。
が、斉藤の忠告など聞いていなかった矢央は、勢いよく振り返ると、ガバッと斉藤に飛びかかった。
声には出さないものの、かなり驚く斉藤。
「…どうかしたのか?」
押しやることはせず、なすがまま状態。 というかお手上げ状態で、矢央を見下ろした。
斉藤の脇腹に額を押しあてたまま矢央は、
「人肌が恋しい今日この頃と言いますか」
「…なんだそれは」
「寒かっただけで〜す」
だったら部屋に入ればいいのに。 と溜め息つきながらも、押しやることはない。
最近の矢央は何を思ってか、誰彼構わず抱きつくという悪い癖を身に付けてしまった。
ついこの間も。
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