駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
矢央がこの時代にきてから見た目では全く年を取っていない。
なので周りにいる人間は皆少し老けた…というか、渋くなった。
なのに自分だけは成長中のままで、しかし元の時代では経験できないことを沢山経験し乗り越えてきたからか矢央の雰囲気そのものは成長している。
「胸なんてな野郎に揉まれてりゃデカくなる!」
「…なっ!?なななにを言ってるんですかっ!」
突然突拍子もなく発せられたセクハラ発言。
この時代にセクハラで訴える法律などないので、呑気に茶を啜っている原田を恨めしいげに睨むしかない。
そして未だに自分の胸元に集まる視線から身を守ろうと両腕で隠してみた。
「なんなら俺が揉んでやろうか?」
まるで肩揉みでもしてやろうか的に、さり気なくあっさりと言う永倉に今度は視線が集まり、満腹になった腹を撫でていた永倉はニヤリと微笑む。
「手取り足取り優しくしてやるぜ」
「なっ!なにをですかあぁぁあっ!!」
「なにを…ってなあ?」
茹で蛸のような顔で怒る矢央から斉藤に視線を送れば、俺に振るなと顔を反らされてしまい苦笑いだ。
この手の話は男同士ならよくあるが、矢央には不味かったらしい。
「そんなことより間島。早く食べてしまえ。副長
をあまり待たせるな」
からかわれてると悟り、何かやり返したい矢央だったが斉藤に言われ土方に呼ばれていたことを思い出すと仕方なく食事を始めた。
その隣では未だにニヤニヤしたままの永倉と大きく溜め息をつく斉藤に、ポンポンと矢央の頭を撫でる原田がいる。
この男達相手にムキになっても仕様がなさそうだ、と最後に残っていた苦手な煮物を口にした。