駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
土方ならそう言うと思っていた。
否、土方だけではなく、誰に提案したとしても矢央に危険を起こさせてまで……と思うだろう。
「でもっ、それしか山崎さんをっ」
「それでもだ。山崎だって、そうまでして生き長らえようとは思わねぇだろうよ」
矢央の目に映る土方の横顔は何か覚悟を決めたようにも見えた。
そろっと山崎に視線を移すと、握っていた手がピクリと反応を示す。
「山崎さんっ!?」
お願い!目を開けて!
祈るようにして顔を覗き込むと、ゆっくりと持ち上がる瞼。
睫が小刻みに揺れているのは、それ程瞼を持ち上げるのすら辛いということなのか。
「山崎っ」
「山崎さんっ」
「……ふく、ちょ…間島…か…」
「山崎さん、良かった!今のうちに薬飲みましょうね」
薬を取るために離そうとして手を頼りない力で引き止められたら。
その手は弱々しく震えていた。
「副長…少しだけ…こいつと話たいんですが…」
起き上がれない山崎は、視線だけで無礼な態度を詫びるが土方も気にするなと目で語っていた。
信頼しあった二人だからこそ気持ちが分かるのだろうが、矢央は意味が分からず困惑している。