駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
次第に小さくなっていく声に不安が積もる。
それでも山崎は語るのを止めない。
話しておかなければならないと、どこか切羽詰まった空気が漂っていた。
「お前がおらんなったって騒いでた皆の姿、思い出したら笑えるで」
任務を終えて屯所に戻ってみれば、皆が皆慌てて一人の少女を捜しているではないか。
あの土方ですら……。
「そん時思ったわ…この人等にとって、お前は決して失ったらあかん存在になるって」
そしてあっさりと矢央を見つけ出した山崎は、悲しみと悔しさと不安と孤独を抱え泣く少女を見て感じた。
きっと自身にとっても失いたくない存在になるだろうと。
「そしたら当たったわけや。…殺さんで正解やったな」
「……あの時、山崎さんが言ってくれたんですよ」
無言で聞き役に徹していた矢央が口を開と、山崎の頭がコテンと傾く。
『信用されんと思うてまうのは、まだお前が俺らに踏み込んできとらんから、そう思うんや』
「図星だなって思いました」
『何処かで遠慮して、踏み込まんようにしとる。 本心を言わんと強がっとる、ちゃうか?』
「だって怖かった。私を必要としてくれるか不安だったから…」
『他人の気持ちを知る能力なんかないんやぞ。 語らな、何も相手に伝わらん。 わかってほしいなら、わかってもらえるまでぶつからなあかんのとちゃうか?』
「その言葉が私に勇気をくれたんです」
『己で扉を開けてみぃ』
「この時代でっ頑張ろうって思ったんです!」
『俺は、信じたるわ』
「…嬉しかった。本当に嬉しかったっ」
泣くつもりなんてないのに、山崎が昔話なんてしだすから涙が出てきてしまった。
抗議しようと、何か言い返してやろうと思うのに口から出る言葉は感謝の言葉ばかりだ。
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