駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「怒られちゃいました」
前髪を整えながら舌を出す矢央を見て微笑む永倉は、ある提案をした。
「矢央、出掛ける支度しろ。朝餉を食ったら少し出るぞ」
そう言えば大坂を出る永倉を見送る時、江戸に着いたら連れて行きたいところがあると言われていたことを思い出し、何処に行くのか気になりつつ支度をするため井戸へと向かった。
*
「ねえ新八さん、私達だけ出掛けていいんですか?」
歩幅を合わせ隣を歩く永倉を見上げ心配そうに問う。
「土方さんに許可もらってるから大丈夫だ。つうか、土方さんも連れて行ってやれって言ってくれたしな」
それを聞いて安心したが、土方も賛成する場所とは何処なのだろうか。
聞いてもこの時代の人間ではないので分からないだろうと、大人しく永倉に着いて行くと結構歩く羽目になった。
「着いたぜ」
「つ、疲れた。…此処はーー」
自分と違い全く息を乱していない永倉の隣で見上げた階段。
見覚えがある場所だった。
「此処は、お華がいた神社だ」
やはりそうか。
神社は昔も今も大して変わらない考えは正しかった。
階段の両脇を木々が覆い、あまり手入れのされていない神社は少し矢央がいた時代よりは荒れ果てているが。