駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
階段を登ると、前方に古びた祠。
広い敷地の右側に立派な御神木がある。
ーーーーー懐かしい。
可笑しな感覚だった。
この時代のこの神社を見るのは初めてなのに、酷く懐かしいのだ。
ぐるりと見回したあと、ゆっくりと御神木に歩み寄る矢央の後ろを着いて行く永倉は、その立派な大木を見上げた。
「此処から全部始まったんです…」
バイトを探していた矢央は、この神社の巫女のバイトを祖父の勧めで始めた。
そしてバイトの日はいつもこの御神木を見上げ、神社内の掃除に励んでいた。
この時代にタイムスリップしたその日も、掃除をしていて御神木の傍で赤石を見つけて意識を無くし、次目覚めたら彼等のいる屯所だったのだ。
「あの神社でのバイトも運命だったのかな」
「ばいと?」
「あ、仕事です仕事。私、おじいちゃんに此処で働いてみないかって言われて働いてたんです。
そしたら、この時代に来て皆に出会った」
「たから、此処が始まりの場所か」
永倉も感情深げに御神木に触れた。
「確かこのあたりだったんですよー?」
屈み込んで土に触れながら、この場所で赤石を見つけたことを伝えた。
そして肌身はなさず持っていた藤堂に貰った巾着袋を取り出し、その中から赤石を出して掌に乗せる。
するとその刹那ーーーーーーー
あの日と同じように強い風が二人を襲った。