駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
真っ暗な空間。
ああ、これまであの時と同じなのかと嘲笑う。
「お華さんでしょう?」
「お久しぶりです。矢央さん」
以前は声だけだったお華が、今はその姿を見せていた。
久しぶりに向き合う矢央とお華。
「とうとう此処まで来たんですね」
「はい。東京…江戸に戻ったら此処に来たいって思ってたんです。お華さんが過ごした、この神社に」
きっと待っていてくれているような気がしていたから。
「此処での最後の思い出は悲しいものでしたが、それでも楽しいことも幸せなことも沢山ありました。惣司郎君に出会ったのもこの場所だったから」
「そっか。私も、なんだかんだで此処が始まりの場所だから。今日来られたことは良かったと思います」
「ふふ。そういえば矢央さん、永倉さんと恋仲になられたのですね?」
嬉しそうに微笑むお華に釣られて、矢央もまた微笑む。
「永倉さんは、優しいですか?」
「優しいですよ。でも、怒ると半端なく怖いんですけどね」
何かを思い出したのか、矢央の口角が引き摺ったのを見て面白そうに笑うお華。