駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
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朝稽古を終えた原田と斉藤は勝手場でお茶を飲みながら、白さの増す外を眺めていた。
食事の支度を手伝っていた矢央は、斉藤の湯飲みにお茶のおかわりを濯ぐ。
「山南さんは、相変わらずか?」
礼を言った後、湯飲みに唇を押し当てる。
ふうと息を吐くと、白い湯気が流れるように昇っていった。
「…はい。 今朝は食事もいらないって言われて」
「どうしちまったのかねぇ。 山南さんといい新八といい、最近はあまり顔すら出さねぇ」
「そういうあんたこそ、最近やたらと出掛けて行くじゃないか。 逢瀬か」
「ブウッ!? なんでそれをッ?」
吹き出した茶を拳で拭うと、原田は斉藤の視線の先に目を向けた。
お盆を両腕で抱え込み 「えへっ」 と舌を出す矢央がいた。
「また後をつけたなッッ?」
「沖田さんが暇だって言うから」
「つけられて気付かぬ、あんたもあんただ」
「なにをッッ!?」
滅多に人をからかうことのない斉藤が珍しく原田をからかいながら微笑している。
最近は、このような意外な組合せを良く目にする矢央だった。
「…バラバラにならないでほしいなぁ」
斉藤と原田の騒ぎに苦笑いを浮かべつつ、勝手口から見える渡り廊下の先を無言で見つめた。
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