駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
ーーーなにが俺を忘れるな、だ。
「新八さんっ…好きっひゃあっ…」
忘れさそうとしていたくせに。
矢央の幸せを願うなら、自分など忘れて生きて行く方が良い。
望みなんて持たせると、矢央が辛いだけ。
なのにーーーーーーーー
「矢央っ…」
美しい涙を流し、自分に必死に応えようとしてくれる矢央を手放したくない。
自分の中でこんな感情が溢れて止まない日が来るとは思っていなかった永倉は、矢央の汚れのない肌へ何度も唇を落とした。
自分のものだという証を、その白い肌に幾つも幾つも咲かせていく。
「新八さん…お願い…ですっ…好きって…あっ」
「…っ好きだ。矢央…愛してる…」
永倉の頬を両手で包み込んでいた矢央の瞳からは、とめどなく涙が溢れた。
痛くて辛いのに、この感覚や感情は全て目の前の愛しい男がくれるものだと思えば全てが愛しい。
お互い思い出を残すように、忘れないように何度も何度も口付けを交わし、気付けば空はうっすらと明るくなり始めていた。
気を失ってしまった矢央の額を撫でる。
頬には涙の後、そして情事のあとの余韻が残る赤見の増した頬。
順番に撫で唇を落とし、最後に薄く開いた唇を名残惜しそうに撫で口付ける。
「…幸せになれよ」