駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
第八話*新選組を託す
「ゴホッゴホッ…」
沖田の咳が酷くなっている。
毎朝沖田の部屋にやってきて衰弱していく姿を見ても、矢央は笑顔を絶やさないようにしていた。
「…矢央さん、近藤さんから文はきていませんか?」
ギクッと一瞬身体が強張るも、なんとかそれらしく装う。
「きてないですね」
「そうですか…」
「でも文がこないのは、忙しくしているからだと思いますよ!元気にしてますよ」
沖田には近藤が捕まったことは伏せるように言いつけられていたので、隠し事が下手な矢央は毎回上手く誤魔化せているか正直心配だ。
だが沖田が矢央の言葉に納得し、安心したように頷くのでホッと胸を撫で下ろす。
「土方さんもあれからどうしてるんですかね?」
細い肩が小さく上下する様子から、話をするのも本当は辛いのかもしれない。
最近では滅多に布団から起き上がることもなくなった。
「あの人こそ元気ですよ。そのうちひょこっと顔を見せるんじゃないですか」
「ふふ。矢央さんと土方さんを見ていると飽きないですよ」
「……なんかやだ」
沖田が元気だった頃、土方をからかって遊んでいたのは沖田であるが、それに便乗し沖田の後を受け継いでくれた矢央に沖田は満足している。
見ている方は面白いし、土方にとっては相手を追いかけることで程良い運動にもなるだろう。
そうとは知らない矢央は、いつも土方に追われて疲れ果てるのだが。