駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
原田が訪ねてくる前に永倉や斉藤、土方も会いに来てくれたことを嬉しそうに語る姿を微笑ましく見つめながら、そう言えばこんなこともあったなと庭へ視線を流した。
最初から原田は矢央に優しく接していて、良き兄的存在に位置していたが、あれは芹沢暗殺の時だった。
矢央が身体を張って芹沢達を守ろうとするのを原田は躊躇なく任務遂行し、そして新選組を出て行くきっかけを作ってしまったのも原田だった。
傷心している矢央に厳しい言葉を投げかけ追い詰め、それを友に攻められもした。
そんなことがあったのに、矢央は原田を攻めることなく今もこうして慕ってくれる。
「原田さん、聞いてます?」
「ーーん?ああ、悪い」
「ぼーっとしてましたもんね。疲れてます?」
「うーんまあ、少しな」
原田も此処へ来るまでに色々あったので、癒やしを求めてやってきたようなものだ。
それを聞いた矢央は、横になって休んでくださいと促してくるので原田は遠慮なく横たわる。
暫く睡魔と戦っていたが、あることを告げなればと思いもう一度起き上がり声をかけた。
「矢央、聞いてくれるか」