駆け抜けた少女ー二幕ー【完】





目を覚ますと気持ち良い風が部屋に入り、陽もだいぶん高くなっていた。


あ、寝てしまってたんだ。


霞む目を擦ろうと手の甲で触れて、頬が濡れているこに気付いた。



「大丈夫ですか?」

「…矢、央さん?」


ヒョコッと上から覗き込まれて、夢と現実がこんがらがる。


「…どこか痛みますか?」

「…あ、これは…少し懐かしい夢を見てしまって」


涙を流していたから気遣ってくれていると察し、沖田はゆるゆると首を振って大丈夫だと言った。


「懐かしい夢ですか?」

「…こほっ…はい。とても、懐かしい夢です」



夢のおかげか今は少し身体が楽になったような気さえする。




「総司さん朝起きそうもなかったら、ほらお薬今飲んじゃってくださいよ」



矢央は沖田が薬を飲みやすいように身体を支えてやりながら、力の入らない腕に手を添えて薬を飲むのを手伝った。


「…苦い…」

「苦いから薬なんですよって、これ昔誰かに言われたな」



もう一度布団に横たえられて、沖田の浴衣を畳んだり沖田の邪魔にならない程度に部屋の片付けをする矢央を目で追っていく。



「…ありがとう」

「んー?なんか言いました?」

「いいえ。あ、そうだ矢央さん、お願い聞いてもらえませんか?」

「お願い?」

「どうしても行きたい場所があるんです」



起き上がれない程に衰弱しきった身体を無理矢理起こした沖田は、刀掛けに掛けてある愛刀を震える手で持った。

それを杖代わりにして立ち上がる沖田に、慌てて駆け寄り支えると「すみません」と苦笑い。


そんな沖田を見上げ、



「すみませんじゃなくて、ありがとうですよ」

「……はい。ありがとう」

「どういたしまして」









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