駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

沖田がどうしても行きたかった場所があった。

そこは自分の全ての始まりの場所のような気がしていた場所だったが、ずっと避けていた場所でもある。


「ーー神社ですか?うーん、少し歩くには距離がありますよね?」


お華の育った神社。

お華を死に追いやってしまった神社。

そして、矢央をこの時代に導いた神社。


そこにどうしても行っておきたかった。



「すみません。でも、どうしても…ゴホッ…行きたくて」


咳き込ん座り込んでしまう沖田の背中を撫でていて、痩せてしまって背骨が浮かぶ背中にぐっと歯を食いしばった。


辛そうに眉を寄せ、何度も何度も咳き込んでいるうちに口の中に血の味が広がっていく。



「…あーあ、また吐いちゃいました」

「………」


目が泳ぐ。

そんな暢気に言うことじゃないのに。


それでもまた立ち上がろうとする沖田を、きっと止めることはできないだろう。

日が暮れても這いつくばってでも、きっとあの神社へ行こうとする。



「……あっ」


背中が暖かくて、スーッと身体が楽になっていく。


直ぐに分かった。
矢央が力を使ってくれたんだと。


目頭が熱くなって俯いた沖田。



「…っありがとう…ありがとう。矢央さんっ」

「コホッ…さあ、行きましょうか」


矢央に促され頷き、軽くなった身体であの神社へと二人は向かった。





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