駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
未来ではほぼ毎日のように見上げていた御神木。
過去のこの時代では、これが二度目になる。
「総司さん、此処でいいですか?」
神社の階段を上がって直ぐにある大きな岩に沖田を持たれさせる。
そこからなら立派な御神木がよく見えた。
「本当に立派ですよね。おじいちゃんが言ってました。昔からこの御神木に皆守ってもらってたんだよって。なんかそれが本当に思えるくらい神々しい雰囲気ですもんね」
「…お華からも、そんな話し聞いたことがあります」
歩ける程度に癒やしただけだったので、岩に持たれている沖田は荒い息遣いだ。
時々詰まりながらも、御神木を見上げたまま話を続けた。
「…此処で私はお華に出会い、そして失って。矢央さんは此処でお華の石を広い、この時代へやってきた」
小さな沖田の声を一行一句聞き逃さないように耳を澄ませた。
「…私達の…始まりは、此処から…なんですね」
矢央も以前同じように思っていた。
運命が三人を此処へ導いたのかもしれない。
否、お華か、と頬を掻く。
「私ね今だから言いますけど。総司さんのこと少しだけ恨んだことがあるんです」
「え……」
「お華さんは皆を守りたいから私をこの時代に連れてきたって言ってたけど、本当は違うと思うんですよね。
新八さんを好きになったから気付いたんですけど、お華さんは総司さんが好きで、その好きな人がずっと自分を攻めてるもんだから死ぬに死ねずにいたんじゃないかなって」
矢央は立ったままずっと御神木を見上げていて、沖田からその表情が見えず不安になる。
「総司さんがお華さんの気持ちをちゃんと受け止めていたら、きっとお華さんはそのまま成仏して、私も此処へ来ることはなかった…」
「すみ…」
「でも今は違います。総司さんが悩んでくれたおかげで、お華さんがいてくれたおかげで私は此処にいる。
此処で皆に出会えました!」