駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「お華…近藤さん…?」
階段の前にお華と近藤が沖田を見て微笑んで立っていた。
ああ、やっと迎えに来てくれたんですね。
沖田の瞳から大量の涙が溢れ出す。
薄々気づいていた。
矢央はやはり嘘が下手で、沖田が近藤のことを尋ねる度に右頬がピクリと引きつる。
これは矢央が嘘をつくときの癖だと分かった沖田は、もしかしたら近藤が会いに来ないのはもうこの世にいないからではないかと思っていた。
でも一人で自分を支えようとしてくれる健気な姿を見ていると、知らないふりをしてあげるしかなかった。
どれほど辛かったことか。
毎日病に苦しみ、近藤と共に戦えないのならいっそのこと早く殺してくれたらいいのにと。
なのに皆沖田に生きろというのだ。
刀を持つことができなくなって、布団から起き上がることも困難になって、矢央の世話にならないと何もできなくなっていく己。
不甲斐ない。
やるせない想いに毎日目を覚ます度に、お華の姿がないかと探していた。
“いつか迎えに行きます”と、言ったお華のことを待っていた。
そして漸くお華は迎えに来てくれた。