駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
ーーやっと来てくれたんですね。
『今まで本当に頑張りましたね』
ーー私は何もしていませんよ。
沖田は矢央に視線を向ける。
何かをずっと語り続けている矢央を見て、チクリと痛む胸にすら手を伸ばす力が出ない。
ーー私がいなくなったら矢央さんは一人になってしまう。
今までずっと支えてくれていたのに、私は矢央さんを最期まで泣かせてしまうんですね。
『大丈夫です。矢央さんは、そんなに弱くないから。信じてあげて』
『そうだぞ。そろそろ矢央君を自由にしやれ』
自由。
新選組に関わったことで、矢央は本当に狭い世界の中で生きてきた。
その中で必死に生きて、愛しい人にも出会えたというのに、今度は自分(沖田)という枷で矢央の自由を奪ってきた。
矢央はきっとそんなことはないと言うだろう。
優しい子だから。
「ーーでね、あの時ーーだからーーーと、思うんですよねーー」
一人話し続けている矢央の背中に向かって、沖田は震える口を開き言った。
「矢央さ、ん…今まで…ありがとう…」
本当に本当にありがとう。
貴女に出会えて、貴女がいてくれたおかげで、私は此処まで生きることができました。
だからどうか、どうか自由に生きて
幸せになってください。
「総司さんに私言ってなかったですよね。
私総司さんのことーーー…っっ!!」
その時、矢央の頬に雫が伝った。