駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「……で、お前はなにをしている?」

「ん~?」


目を閉じているとパチンと額に軽い痛みが走り、気怠そうにゆっくり瞼を持ち上げて顰めっ面の土方を下から見上げた。



「なにってお昼寝しようかなーって」



戦の話ばかりする土方の長い話に少し休息を挟んでくれとばかりに、矢央が土方の話を折って膝を付いたまま傍に寄るとゴロンと横になった。


そして一切躊躇うことなく土方の胡座をかいて座る片方の太股にちょこんと頭を乗せて瞼を閉じたところ、土方が待ったを仕掛けてきたわけだ。



「昼寝すんなら自分の部屋に行け」

「面倒です。経るもんじゃないしちょっとだけ……」



いくら優しいのぶ達の下にいるといっても気は使ってしまうので、毎日迷惑をかけないようにと率先して手伝うようにしていた。


だから朝ものぶに合わせて早いし、現代と違って掃除するのも兎に角時間と手間がかかるので昼過ぎにはヘトヘトになっていたりする。


それでも誰もいない上に誰も訪ねてこなくなった日々の中で、矢央が寂しさを紛らわせるのにはこれくらい忙しい方が良かった。



「土方さんの膝枕久しぶり~」

「…ったく。少しは成長したかと思ってたのに、やっぱりお前は餓鬼だな」



忙しい毎日を送っていて久しぶりに矢央を訪ねてきたのが土方だったので、土方の顔を見た途端に全身の力が抜けたようだった。


話を聞いている間も実は少し眠かったなんてとても言えないが、キリ良く話を中断出来たので今の状況にいたる。


土方は土方で自分の足を枕にしてスヤスヤと眠ってしまった矢央に文句を言いつつ、その頭を退かそうとせず大人しく寝かせてやっていたので、そのあと暫く矢央は本気で眠りに入ってしまった。






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