駆け抜けた少女ー二幕ー【完】




雲間から月が覗き、淡い光が積もった雪に反射し、より宴を盛り上がらせる。


「ひぃ〜、さむっ」

「あったりめぇだろ。 障子開けてたら、部屋が暖ったまらねぇ」


広間の端の障子を一人分だけ開けて空を見上げていると、想像以上の寒気に襲われ腕を擦った。


「だって酒酔いしそうなんだもん」


ノリに乗って酒を飲みまくっていた原田は、ふと傍にいた小さな身体が消えたことに気が付いた。


矢央の抗議に嫌な顔一つせず原田はニッと笑いながら、持って来た酒をチビッと飲んだ。



「どうだ、お前も飲むか?」

「…ムッ。 ずっと前に飲んで暴れて、誰かさんに散々怒られたから、もう飲みません」


それは、矢央が壬生浪士組に迎えられた時の宴会でのこと。

散々羽目を外した結果、鬼の副長にかなり絞られた。

あれは悪夢そのもので、矢央にとっては、もう経験したくない懐かしい思い出だ。


それを知ってからかう原田から視線を反らし、澄んだ空を眺めて楽しもうじゃないかと気分を入れ替える。



「…やっぱりよぉ、こういうのは良いよな」


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