駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

珍しく原田が浸っている。
宴会となれば、藤堂や永倉と共に我先にと騒ぎ立て、普段なら既に腹芸でも披露しているだろう。


壁にもたれ、矢央と共に空を見上げ月を酒のあてにしている。


「俺は、土方さんや新八みてぇに難しく考えるのは性に合わねぇ。 だからよ、どっちかっつーとお前みてぇな単純な想いの方が分かりやすくて共感が持てる」



永倉と藤堂の飲み比べが始まったようで、賑やかさが増した。

まだ飲むか。と呆れつつ、チラリと原田の横顔を伺うと何だか笑えてくる。


「原田さんは行かないの?」

「明日、朝早ぇからよ。 今日は控えめにしとかねぇと、また怒られちまう」


杯を傾け、チビチビと酒を口に運んだ。


「あ、もしてかして! おまささん?」


原田の女の名前を口にすれば、ほんのり染まっていた頬が、また少し赤みを増した。

コホンと一つ咳払いし、誤魔化すつもりで今度は一気に杯の中の酒を飲み干した。



.
< 63 / 640 >

この作品をシェア

pagetop