駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
そして矢央が最後に向かった場所に、近藤、土方、そして愛しい永倉の墓があった。
此処は永倉が矢央が願った通り、彼らのために建てたお墓である。
「新八さん、ちゃんとお役目果たしてくれたんだね」
永倉は此処でどんな想いでいたのだろうか。
近藤や土方と最後まで共にいることはなかった永倉が、どんな想いで彼らのために墓を建てたのかは想像すら出来ないが、きっと彼らの存在を忘れてほしくなくて、そして彼らと共にいたいからこそ自身の墓も此処に建てたのかもしれない。
どんな形で別れたとしても、やはり永倉の心も新選組とーー誠と共にあったのだろう。
「近藤さん土方さん、お久しぶりです。
同じ東京にいるっていうのに、三年経って会いに来て薄情者とか思います?
でも、私なりにちゃんと皆のこと受け止めたくて、こんなに時間かかっちゃいました。
二人には本当に感謝しかないです。二人がいてくれたから、私は新選組の仲間になれた。
最後まで共には出来なかったけど、心はずっと皆と一緒です。これからもずっと」
ねえ、土方さん。
私に自由になれって言ってくれたから、私はあの決断が出来たんですよ。
土方さんは、結局一人になった私に今ならなんて言ってくれるかな?
可笑しな話だけど、また土方さんに怒られたいなって……ほんのちょっぴりだけ思ったりします。