駆け抜けた少女ー二幕ー【完】


「おやおや、矢央さんも眠ってしまったようだね」

「源さん、その布団貸してやってくんねぇか」


火鉢の側で猫のように丸まって眠ってしまった矢央。

部屋へ連れ帰ることも出来るが、永倉は井上から布団を貰いそれを矢央にかけてやった。



「じゃあ、私は部屋でゆっくり寝るとするよ」

「はいよ。 おやすみ」


井上が出て行った広間で起きているのは永倉と原田のみ。


沖田、藤堂、矢央は川の字になって眠り、斎藤は随分と前にいなくなっていた。



「左之、もうちぃっと付き合わねぇか」


三人の安心しきった寝顔を見てから振り返った永倉は、壁にもたれ徳利を持ち上げた原田に笑いかけた。


「そう言うと思って、ほれ」

「用意が良いねぇ」



雪が吹雪く音に耳を傾け、行灯の灯りにユラユラと壁に映る影が揺れる。


今日という特別な日が、ゆっくりとしかし確実に終わっていくのを二人は思い思いに浸っていた。



「なあ、左之」

「ん?」

「お前が出て行くとなると、部屋が広くなるな―…」

「そうとも限らんぞ。 なんせ隊士が増えて手狭になってきたからなぁ。 一人減ったところで、だろ?」

「だ〜な〜…」



明日になれば、年が変わる。

また新しい一年に、新撰組は止まることなく唯突き進むのみ。


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