駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
なかなか核心的な会話にならず、半ば馬鹿らしくなってきた。
退屈していたのは確かだが、こうしてわざわざ働いてまで原田とおまさの関係を探る必要があっただろうか?
と、客に茶を出しながら溜め息を吐く。
だいたいさ新撰組は恋愛禁止ってわけじゃないんだし、原田さんが誰と付き合っていようが関係ないんだよね。
仲間の色恋沙汰の話がなかったせいで、いきなり舞い込んだ原田の話題に思わず食い付いてしまった。
しかし、此処で二人の関係が分かったからといって、
「お姉さん!姉さん!」
「それで終わりじゃん……って、はーい!」
外にある休息場から声がかかり、急いで向かう矢央。
その様子を店の奥から見ていた沖田は、湯呑みを置くと 「ご馳走さま」 とお勘定して店を出る。
「お待たせしました! ご注文は?」
大分慣れはじめた矢央は、にこっと笑みを浮かべながら暖簾を潜る。
そこにいたのは、薄汚れた着物に笠を被ったいかにも旅人らしき男。
「あの、ご注も……わっ!」
返事がない男に何の不信感もなく近付いたのが間違いだった。
傍に寄った矢央の腕を掴んだ男は、矢央の腕をグルンと捻り背中に押さえつけ動きを封じてしまったのだ。
「――なっ! いたっ!」
「手荒い真似をしてすまないね。しかし大人しく着いて来てもらえるかな?」
「え?」
耳元で囁かられた言葉は優しいが、腕に込められた力はギシッと更に強さを増している。