駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
山南を捜し廊下を小走りで進んでいた矢央は、ふと聞こえた声に足を止めた。
柱に身を潜め覗き混むと、矢央の眉間に皺が刻まれる。
伊東と山南だ。
一人は捜していた人物なので良し、だがもう一人が気に食わない。
永倉に 「良く知りもしねぇで悪く言うもんじゃない」 と言われたが、それでも気に食わない。
特に、あの何を考えているか分からない薄笑いが。
白い顔に皮肉な笑みを張り付け、山南に何かを語りかける伊東が無性に腹立ち割り込んでやろうとしたが、すんでのところで思い止まる。
(ここで出ていくより、盗み聞きした方があの人の企みが分かるかも?)
こう考えるようになったのは、観察方の山崎の教えあってのもの。
そして伊東が怪しいと勘繰るのは、長い間土方と共にいて身に付いた経験から。
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