駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

明里の想いは、その訴えかける眼差しを見れば分かる。

共に外に逃げることが許されない二人だからこその苦しみを分かち合っているのか。



「大丈夫です。 山南さんは、みんなに愛されてる人ですもん」


それを本人が気付いてくれたらいい。

仲間として頼られ必要とされていることを。




山南を一人残し、矢央達は屯所に戻るために島原を後にした。


雪に足が取られながら歩く矢央に、そっと手が差し出される。

誰だろうと、その手の先を見れば唇をキュッと結んだ藤堂である。


照れからか、言葉は発しない。


矢央は少し先を歩く永倉と原田を見た。

肩を組み、わあわあと騒ぎながら歩く酔っぱらいの背中を見たのはほんの束の間、それに気付く者はいないだろう。


「……危ないから、さ」


躊躇っている矢央に焦れた藤堂が先手を打ち、小さな手をグイッと引く。


「あ、ありがとう」

「うん……」


寒い寒い銀色に輝く道で、二人だけは少しだけ身を熱くした。

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