駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
桂の前に矢央がいるにも関わらず、原田が抜いた刀の先は矢央の脇腹ぎりぎりを狙っていた。
間一髪で身を捩った矢央は、
「殺す気ですかっ? 助ける気あんのあんたらはーっ!」
と、息を乱しながら叫ぶ。
「助けるもなにも、お前もう助かってんだろ」
「は? なにいっ……あ、ほんとだ」
先程の攻撃から逃げるため、桂と矢央は別々の方へと逃げた。
油断した桂は、人質である矢央を逃がしてしまい舌打ちをする。
「…くっ。 仕方ない。 此処は引かせていただこう」
新撰組の隊長二人を相手にするにはあまりにも不利だと判断した桂は、体の向きを返し走り去って行く。
「待ちなさいっ! ……っ!」
桂を逃がすわけにはいかないと、追いかけようとした沖田を突然胸の痛みが襲った。
膝をついた沖田は、沸き起こる喉の熱さに荒い息を繰り返す。
「くっ…ハァハァ…ゴホッゴホッ!?」
咳き込んだ沖田に駆け寄った矢央と原田は、沖田の青白くなっていく顔を見て眉を寄せた。
「沖田さん! 大丈夫ですか?」
「総司っ。 馬鹿野郎っ、無理すっからだ! 矢央、直ぐに屯所に帰るぞ」