駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
宛もなく走った。 屯所を抜け出し、気付けば沖田とよく寄る壬生寺まで。
「はあ…はあ…ッッ…うぅー…」
行き止まりに足を止め、夜に染まりだした空を見上げ涙が溢れてくる。
泣かない、と決めたのに、戸惑いと不安の混ざった涙は止めようがなかった。
「や…まなみ…さ…んッ…」
―――
――――……
「……土方さんよぉ、いくら矢央に関わらせたくないからって、あんな言い方すれば傷付くぜ」
「………」
矢央が出て行った広間では、異様な空気が漂い、無言で過ごすのにも息が詰まる。
永倉は出て行く間際に一瞬見えた、矢央の涙に小さく舌打ちをした。
しかし誰も矢央を追わなかったのは、土方のやり方は捨て置き、彼女がこの事に関わるのは賛成ではないからだろう。
目に見えている。
また、小さな身体に大きな悲しみを溜め込むと。
「……お知らせします。 山南総長を大津方面にて発見と」
島田の報告を受けた山崎が、それを淡々と土方に伝える。
土方は紫煙を撒き散らし渋い顔を見せた。
「…そうか。 下がっていい」
「御意」
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