駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
近藤の大きな溜め息が部屋に響く。 どうやっても解決策が見つからない。
今になって後悔をする。 何故に山南の異変に気づかなんだ。
「…私が追いましょう。 馬を借りて行きます」
足袋のする音に皆が目を向ければ、下ろしていた髪を結い上げる沖田がいた。
「総司ッ!」
近藤が慌てて止めに入った。
「山南(さんなん)を見かけてから半日は既に経っている…だから、さすがに馬を走らせても間に合わんかもしれん」
沖田の肩から震える手を離し、近藤は顔を伏せた。
「もしも見つからない場合は…な、総司…」
「………」
沖田は、僅かに目を細める。
「総司…」
土方の呼び声に、沖田は視線だけを背後に向ける。
カツンと灰置きに灰を捨てた土方は、沖田を睨むようにして言った。
「お前なら見つけられるだろ。 必ず連れて帰って来い」
「………」
「生きたまま、必ずだ」
沖田から視線を反らす。
一歩踏み出した沖田は、ニコッと微笑み。
「そのつもりですよ」
と、廊下を駆けて行った。
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