alternativeⅡ
国連軍モスクワ管区
「肩の傷はAOKの爪によるものだから分泌物の心配はないわ。ただ、傷口はマメにガーゼと包帯を替えて、清潔に保ってね。化膿したらコトだから」

消毒液で手を洗いながら、妃は診察に来たロシア人の少女兵士に言う。

「有り難うございます、妃先生」

目を細めて可愛らしく微笑みながら、少女兵士は迷彩服を羽織った。

…こんな愛らしい顔しているのに、この子がロシア軍特殊任務部隊『スペツナズ』の一員だっていうんだから…。

世も末かしらね。

本人に気づかれないように、妃は小さく溜息をついた。

「それでは失礼します」

礼儀正しく頭を下げて、医務室を出て行こうとする少女兵士。

そんな彼女に向かって。

「サーシャ」

妃は名前を呼んだ。

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