alternativeⅡ
色気のないクリスマスプレゼント。

(でもアイツらしいわよね…)

妃は自分の胸元で揺れる、ゴールドのチェーンに通した同じゴールドの小さな指輪を見た。

軍刀の持ち主が、かつて妃の誕生日にくれたもの。

妃は軍医なので指輪をしていては治療に支障が出る為、こうしてペンダントとして身につけている。

親友は年下だが、同期に国連軍に入隊した縁から友情を育んだ。

親友は部隊に、妃は軍医に進み、所属する基地も別々になったものの、その友情は今も続いている。

…続いていると、妃は思っている。

しかし最近になって彼女は思うのだ。

傷痍軍人となった親友が妃に送ってくれた軍刀。

これは、いよいよ戦場に立つ事になった妃を、死地に導こうとする親友の皮肉なのではないかと。

自分にだけ後遺症の残る傷を負わせて、のうのうとこうして五体満足に生き延びている妃を、親友は恨んでいるのではないかと。

妃はそれだけの事をしたのだから…。

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