alternativeⅡ
失意の溜息を漏らしながら。

「はぁー…死ぬ前にもう一度だけ、おやきを食べておきたかったわ…」

ポツリと呟く妃。

「え?何です?」

男性士官が問い返す。

「おやきよ、おやき。私の生まれた日本の長野県の郷土料理でね、小麦粉や蕎麦粉を水で溶いて練って、薄く伸ばした皮で小豆や野菜で作ったあんを包んで焼くの。ロシアで言うなら、ピロシキが一番近いかしら。ファーストフードみたいなものよ」

「へぇ…」

思わぬ食文化披露に目を丸くする士官。

「それにしても死ぬ前になんて大袈裟な…生きて帰れば幾らでも食べられるじゃないですか」

「…………」

その言葉に、妃は軽く首を振った。

「駄目よ。私は生き残ったら駄目なの」

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