夕焼けの下で
夕焼けの下で
放課後、誰もいない教室で彼・秦野祐一が涙を流しているのを彼女・桐原紗季は見つけてしまった。


数時間前、紗季は、忘れ物を取りに校舎の中へ戻り夕日の当たる廊下を走っていた。すると、突然強い光が廊下へと続いていた。

そして、紗季は、その光の方へ誘われるように歩いていった。


それから２ヶ月がたち紗季は、あの時の、祐一の涙が心に焼き付いたせいか自然と祐一を目で追っていた。


祐一のことを知らない人はいなかった。祐一は、隣のクラスでサッカー部のエース。クールで優しくてクラスメートや部活仲間にいつも囲まれているほど親しまれていた。


そんな祐一に想いを寄せない女の子はいなかった。けれど…祐一は…祐一には…年上の彼女がいた。

その人は、誰もが憧れる優しくて綺麗な人で祐一とはお似合いだった。２人のことを周りは憧れていた。いつも仲が良くてホントにお互いを大切にしているのだとその時までは誰もが思っていた。


あの事故さえなければ…


きっとその知らせは祐一だけではなくみんなが驚いただろう。紗季も突然のことで信じられなかった。だから…祐一の親友である矢野晃意外、誰もそばにいることはできなかった。


あれから一年…祐一は、変わらず笑顔で毎日を過ごしている。だけどその祐一の笑顔を見て紗季は、胸が痛かった。誰も気づかない彼の哀しみが紗季には伝わった気がした。
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