夕焼けの下で
それから何日かがたち祐一は、遅くまで晃とサッカーの練習をしていた。それは、まるで必死に何かを消そうとしているようだった。

そんな祐一に誰一人声をかけることはできなかった。

それでも紗季は、目を放せず毎日グランドでボールを蹴りながら走る祐一の姿を教室から見つめていた。

「…あの子…確か…隣のクラスの…」

紗季の視線に気づいた晃は、あることを思いついた。

(もしかしたら…彼女なら…祐一を…救ってくれるかも…知れない…)


そして、一週間がたったその日

『桐原さん?』

廊下を歩いていた紗季は、後ろから聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。その声のした方へ振り向くと

『秦野…くん?』

あの日からずっと見ていた祐一が紗季の方へと歩いてくる。突然のことに紗季はびっくりしてその場から動けなかった。そんな紗季の様子に気づいたのか

『悪い、突然でびっくりしたよな?』

少し距離を取り祐一は、優しく紗季に謝った。そんな祐一の優しさに紗季は、申し訳なくなり返事の代わりに小さく首を振った。

『えっと…少し時間あるか?ちょっと桐原さんに話があるんだけど…』

真っ直ぐな眼で紗季を見て祐一は、言った。そして、その言葉に頷き紗季は、祐一に連れられ誰もいない祐一の教室へ入った。


(…この場所は…)


その教室は、初めて紗季が祐一を見た場所だった。違うのはまだ夕日がかかっていないだけ…。

じっと、窓の外を眺めていると

「…桐原さん?」

紗季の様子に心配そうに祐一が優しく声をかけてきた。

「えっ?」

そのかけ声に紗季は、祐一の方を振り向いた。その瞬間、紗季たちは、互いに固まってしまった。
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