夕焼けの下で
何も言わずただ自分を見つめる祐一に紗季は、戸惑いながらもその熱い視線から逃げることは出来なかった。そして…

「あのさ、晃に聞いたんだけど…桐原さん…ずっと俺のこと…その…見てたって…」

何かを確認するかのように祐一は、紗季に問いかけた。その言葉に紗季は、ビクッと体を震わせ


「ごめん…なさい…私にもわからなくて…ただ…秦野くんが心配だったから…」

言葉を探しながら小さな声で紗季は、正直に答えた。そんな紗季に

「そっか…でも、なんで?隣のクラスの俺のことなんか心配してくれたんだ?」

「それは…っ」

祐一の問いに紗季は、肩を震わせながら答えようとしたがあの日の祐一の姿を思いだすと何も言えなくなってしまった。そんな紗季を見て

「あ〜、悪い。言いたくないならいいんだ…。無理に話さなくていいから…」

祐一は、頭を掻きながら申し訳なさそうに紗季に謝った。そんな祐一の優しさが胸に染みたのか紗季の目には涙が浮かんでいた。

「…っ…」
「きっ、桐原さん!?」

その姿を見て祐一は、驚いた。

「なっ、なんで泣くんだよ」
「だって…秦野くんが…優しいから…」
「……」

涙声で答える紗季に祐一は、何も言わずただそっと指で涙を拭い優しく頭を撫でた。


(どうして…そんなに優しくするの…自分はもっと辛くて泣きたいはずなのに…)

そう紗季が考えていると…

「秦野くんは…どうして…我慢してるの?」

紗季は、自然と口にしていた。その言葉に祐一は、ビクッと体を奮わせ表情を曇らせた。
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